【住所】大阪府豊中市緑丘4−1
【TEL】06-6841-0710
【営業時間】
専門店街:AM10:00〜PM10:00
マックスバリュ:AM9:00〜PM10:00
<※一部専門店は営業時間が異なる。>
【開店】2006.11.1 <新築>
【事業主体】イオン
【専門店構成】物販14店 飲食6店 サービス他14店
【関連HP】
http://www.aeon.jp/sc/toyonakamidorigaoka/今年初の、商業施設を訪問しての記事。
おしゃれさや完成度の高さといった面でのデザインを捉えて考えると、もっと話題性豊富な大型施設を年頭に掲げるところながら、ここはちょっと、これからの時代へ向けての試行錯誤を感じさせたところを取り上げさせていただいた。
この1月初頭、流通系の新聞などでも、まちづくり3法の改正と施行(中心市街地の空洞化に歯止めをかけるため、大型商業施設などの郊外での出店規制などを強化し、市街地への出店を優遇するといった試み)による、施設開発の方向転換について触れられているものは多かったが、この施設はそれにおおいに繋がるものだ。
NSC(neighborhood shopping center)と呼ばれる、規制に当てはまらない1万u以内の店舗面積を有する、小商圏に対応した近隣型ショッピングセンターである。それも高級住宅地内という立地でのもの。
二層型オープンモールで、食品を扱う核テナント棟と専門店のA棟・B棟で構成されている。
訪れた感想として思うに、おそらくだが、事業主体側にとっても今後にどう繋げるかの、まだかなりテスト的な運営始動なのではないかという気がした。各テナントの集客力を見ながらここでの課題をどう見極めるかも、今後のNSC展開へ向けて、かなり大きなポイントになるように思えた。
大阪・豊中市の緑丘といえば、有名野球選手の自宅もあるとかと聞いたこともある高級住宅地である。千里ニュータウンの開発とともに宅地開発の進んだところでもあり、その住宅地内、北大阪急行・千里中央駅からバスで約10分というバス通りに面して、その施設はある。周辺には小学校・中学校・高校なども多数あり、団塊ジュニアファミリー世代の人口比率が高いようである。

訪れたのは5日の金曜日、昼過ぎから夕方にかけてだったが、まだお正月休み中の人もいるであろう時期だったこともあってか、駐車場はそこそこ埋まっており、家族連れの姿も多くみられた。その反面、駐輪場はほとんど利用されていなかった。この周辺は坂道も多く、車所有者がほとんどであろうし、普段の買い物でくる主婦層でも車でまとめ買いは、あり得るだろうという気がする。
それ相応の駐車場スペースの確保はこの立地では必然であろうが、近隣への騒音対策などの理解を得ることも大変だったのではないかと見受けられ、夜間の時間帯は駐車スペースが狭められている。

この近隣の理解を得るための努力をうかがわせる部分は、施設の敷地内配置と駐車スペース配置、そして住宅地側からの見え方をさえぎるためのパーティションと植樹、
施設屋上部・折半屋根(4,671m²)の緑化などからも感じるところである。
限られた面積での専門店の選び方は、NSCでは繁栄の分かれ目になるだろうが、高級住宅地を意識したテナント誘致の努力も見られるように思った。

小犬とふれあいの場も持てるスペースを確保したペットショップ、文具雑貨・CDもうまくレイアウトをまとめ販売する書店、インテリアショップとして東京・青山でシボネを展開しているジョージズファニチュアによるジョージズなども大阪での初出店で登場している。地域密着のためであろう内科・歯科などのクリニックの誘致も図られている。
グループ企業のレディスファッションを扱うタルボットも出店しており、NSC規模で今後にどう繋げられるかを見極めたいところではないかと思う。
核テナントである食品を扱うマックスバリュについても、こういった高級住宅地での出店対応をいかに考えるか、今後の課題なのかもしれない。商品の価格帯は、飛びぬけて安くもなく高くもなくだった。大阪府下での競合他社と、ほぼ同じくらいの価格で販売していた。
わたしの考え方だが、高級住宅地であっても、日々の最寄り品を高級品で対応する店を必ずもってくる必要はないという気がする。核はグループ企業である必要があったとして、そうであるかないか以上に、その地域特性に合わせた差別化をどう図るのかしだいではないかと思う。それがデザインの工夫であったり、演出であったり、サービス面の充実であったりするのではないだろうか。地域に合わせた、そんな柔軟性も必要であり、問われる時代かもしれない。
こう書きながら考えてきて思うことだが、高級住宅地であるからこそ、もう少々思い切ったお金のかけ方をしてテストケースにしてもよかったのではないか、というのが個人的な意見である。高級住宅地であればなおのこと、デザイン面での工夫の上にこれらのテナントがより活きるのではないかと感じた。中身あってのカタチだが、カタチあって中身も活きる。近隣との対話もあっての中での手探りな状況だったのではないかと思われるが、大型規模のものよりデザイン面を充実させれば、それなりの結果も得られる立地なのではないかという気がする。
そして、ここで感じられる課題がクリアできれば、より地域に密着できる店づくりに繋げられるようにも思う。
NSCの場合、広域対応を考える大型店以上に顧客ターゲット設定を意識した店づくりが存続に大きく左右するであろうし、GMSの課題ともいえるであろう“なんでもあるけれど、買いたいものがない”といった、なんでも揃えようとするあまりに起こる斬新さの欠如は、NSCに当てはめた時には、ただロードサイドに似たような中規模施設を立ち並ばせて、最終的には淘汰するしかなくなるなんてことになりかねない。
この施設裏手となる敷地では、分譲マンションの開発が進んでいた。マンションが出来たころ、人の流れへの意識は、また違ったものになるかもしれない。
千里中央駅へ向かう帰り道のバスから見えた古いマンションでは、冬空の下、テラスに花が咲きあふれたような演出がされていたり、マンションであっても地域住民の住まい方、暮らしへの意識の高さがうかがえた。
今後の動向を、どう読むか。これからが腕の見せ所ではないだろうか。
