2006年01月29日

大阪府南警察署難波3丁目交通警察官詰所

1月27日に行われた大光電機且蜊テによるJCD商環境フォーラムでの話題の中心は、昨年のJCDデザイン賞2005で大賞を受賞した「大阪府南警察署難波3丁目交通警察官詰所」についてであった。

難波三丁目交通警察官詰所.jpg大阪・御堂筋最南端のなんば駅前、ちょうど新歌舞伎座の御堂筋を挟んだ向かい側に、この小さな建物はある。大阪府南警察の、交番とは少々用途の違う警察官が常駐はしない、御堂筋パレードなどが行われる時のみ使用される詰所だそうだ。
わたしも時々、横を通ることがあったが、中がどのようになっているかといったことも謎めいた、警察の何かなのだろうけれどなんだろう?という不思議さを実は感じてもいた。
黒い円い光沢あるタイルに覆われたひとつの塊が家型となっている。出入口の扉、窓、とてもシンプルな作りなのに、存在感があり、存在感があるけれど周囲を邪魔しない佇まい。御堂筋歩道のいちょうの木の下にあって、その家型が妙に人の心に懐かしさをおこすものでもあるかもしれない。扉と歩道側の窓は鏡面のステンレスとなっており、中は見えずに周囲の環境が映りこんでいる。扉は歩道が続いているような錯覚もおこし、この建物の存在感を周囲と一体化させる役割を果たしている。

JCDデザイン賞2005で大賞を受賞されたこの建物について、設計された米正太郎氏は、最初からこの家型にしようと思っていたわけではなかったそうだ。最初のプランでは陸屋根(フラットな屋根)で考えておられたのが、いちょうの木の存在による常駐はしない詰所での落ち葉処理の問題もあり、家型に変更することとなったという。その他、歩道にあるということ、歩道を挟み銀行の前であることといった環境から、中は見えないように、そして威圧しないもの、そのような様々な条件が出された結果が、この小さな建物には集約されている。
だが、これが結果的によかった。プランの変更が余儀なくされ、落ち込む気持ちに鞭を打ち、環境に合わせて煮詰めていった最終形は、大賞を受賞するものとなった。
写真は、数日前の夜に撮ったものである。この写真ではわかりづらいと思うが、写真やその内容について、設計なさった米正氏ご自身のブログにも掲載されておられるので、そちらもぜひご覧いただければと思う。

101回コア・トーク.jpg昨年度のJCDデザイン賞審査委員長でおられたデザイナー・飯島直樹氏のお話によると、この建物が大賞を受賞するまでの審査で、最後まで競い合っていたものがあったそうで、それが佐藤オオキ氏率いるデザインオフィス“nendo”による「絵本の家」だったそうだ。そして、「絵本の家」は最終的に優秀賞となった。
2つの作品はどちらも公共施設で商業施設ではないが、JCDデザイン賞の範囲も商環境にとどまらない、デザイン全体を考えるようになってなってきているということだった。どちらも、それぞれの環境の中での建築のあり様を問うもののように思うが、それが今、時代の中でデザイン全体において見直されていることでもあるかもしれない。商環境を“コミュニケーションスペース”と飯島氏は表現され、またパネラーの岩本勝也氏は“人を幸せにするためにデザインは存在する”と語っておられた。

環境と人と、対話するデザイン。
「大阪府南警察署難波3丁目交通警察官詰所」には、中が見えないことによる、もしかしたらお巡りさんが今いるかもしれないという周囲への見えない保安になったり、不思議さからステンレスの窓を擦ってみる人がいたりの、これもまたユニークなコミュニケーションも生まれているそうだ。
警察署の建物であるという規律に満ちていそうなはずの建物の姿が、このデザインによって、また新しいデザインの楽しさも教えてくれ、人と環境との対話をも生み出してくれているのかもしれない。


posted by Rin at 21:04| Comment(5) | TrackBack(0) | 建築 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私はいろいろ交番設計のデザインを見てきたのですが、コンセプトをそのままの形でのっけることはとても大切なことだと思います。これを見る限りもっとデザインされてもよかったのではと独断ながら思います。何かによるしかけはそれぞれ建築家の役割で私もお気に入りのnedoさんのデザインしかけはとてもいい発想だと思いました。
Posted by urban+ at 2006年01月30日 00:30
urban+様

人によって、そのカタチ・デザインへの感じ方
も違いますから、いろんな意見があるだろうな
と思います。
おもしろいと思ったことで、審査員の方の間で
も、商業施設デザイナーの方と建築家の方で、
意見が分かれたというお話がありました。
建築家の青木 淳氏は、最初からこの作品を大賞
に選ばれた側だったそうです。
また記事にするつもりでいる、もうひとつ参加
させていただいたシンポジウムでの永山祐子氏
の青木 淳氏の事務所でのお仕事作品(住宅)
の写真を拝見して、なんとなく、この詰所が
気にいられたことが改めてわかるような気が
しました。

交番ではなく、“詰所”であり、御堂筋の
歩道上でのものであると考えると、デザイン
されすぎないデザインは、よかったように
わたしは思います。警察で出されたとお聞き
する条件は、すべて満たしている内容ですし。
あえて言うなら、歩道側の窓の鏡面ステンレス
が、人の手が届きやすいためくもってしまうので、
なにか方法もあったかなとは思ったりはありま
すが、コスト面もあるでしょうし、様々な条件
の中で、トータルして、うまくそぎ落とした結果
のカタチではないかなぁと。

写真はぜひ、米正氏のブログサイトのものを
ご覧ください。
Posted by Rin at 2006年01月30日 12:45
詰所とはなんですか?初めて聞いた言葉なので。
Posted by urban+ at 2006年01月31日 11:13
urban+様

本文にも書きましたが、大阪府南警察管轄の、警察官
が常駐はしない、御堂筋パレードなどが行われる時のみ
交通警察官が周辺交通保安にあたるために使用するもの
のようです。
警察に確認をとったわけではありませんので、シンポジ
ウムでのお話とその名称からわかる範囲の説明ですが。
Posted by Rin at 2006年01月31日 12:25
なるほどやっと納得できました。
Posted by urban+ at 2006年01月31日 19:01
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