2006年03月16日

日本のデザインをめぐる要素

建築やインテリア、プロダクト、良いデザインのものを世に生み出すためには、デザイナーのデザイン力は当然重要なのだが、形にする段階での技術力も非常にものを言い、これも大変重要であったりする。
どんな優れたデザインの図面を描いたとしても、それを見事に形にしてくれる現場サイドの段取りや相談、指示、そしてさらに威力を発揮する職人さんの技のような部分、この協力がなければ良いデザインに結びつかないことは多々ある。
先だってのJCDのシンポジウムでのお話しをまた取り上げると、佐藤オオキ氏のwindというスツールがあるが、あれが出来上がったのは天童木工の職人さんの技あってのものだったそうだ。
話を聞かなくとも業界の方なら、windを一目ご覧になって、天童木工と結びつけられた方も多いのではないだろうか。

この技術力は、気がかりな部分では2007年問題とも絡んでくる。団塊世代の定年退職から起こりうる問題、一見デザインとは関係ないことのように見える社会問題が、良質のデザインを生み出せるかどうかにも関わってくることで、人材の育成がこれから重要課題となってくるだろう。
プロダクト生産においては、海外での生産土壌の開拓もさらに必要とされ、情報管理と技術力発信が日本経済をも支える鍵になるようにも感じる。
また生み出すだけではなく、その後のメンテナンスといった対応の良し悪しも、この問題と昨今の企業の生き残りをかけた大量リストラが関わっている。現場サイドの人材確保は、長期的な展望に立った時の企業の存続において、考え改めるべき問題でもあるかもしれない。

優れた人材や技術力、さらにここから考え進めていくと、本来、日本人が持っている情緒といったことにも繋がっていくようにも思う。団塊世代が築いてきた高度成長へ向けた技術力のこだわりは、勤勉さであり、きめ細やかさに気がつける心からくるものでもあり、昔から日本人が培ってきた精神世界にもおおいに関わる部分である。
そして、この精神的な要素は、デザインの世界にも巡りめぐって反映される必要を迫られる。
日本のアニメーションやマンガは海外でも高い評価を得ているが、そのきめ細やかさや情緒豊かな感性による表現力が評価されているとも言えると思う。
日本国内のインテリアやデザイン雑誌で、売れる雑誌、売れゆきの伸び悩む雑誌の違いも、内容ありきの上で、一目見た瞬間、この感性に響くようレイアウトされているか否かも関係あるのではないだろうかと思うことがある。海外のすばらしいものを日本に取り込む時には、見せ方、色使い、日本の環境に置き換えてみる必要もあるのではないだろうか。
どんなに欧米文化が広がっても、日本人が子供のころから育っていく環境の中で、四季があり、それを愛でる日本人の心理は、好むものを自然に選ばせる。桜の花びらや紅葉に感じ取る色合いや風情のような、そんな環境の中で自然に身につく選べる感性は、今、日本人が見直すべき、世界にも誇れるものを生み出せる原動力のひとつでもあるのかもしれない。
無機質な素材のものすら、まわりの環境とのマッチやいくつかの素材の組み合わせで、わびさびといった風情を表現させるような感性も日本人は持っており、そんな建築やプロダクトのデザインを手掛けられた建築家やデザイナーの優れた方々もおられる。

昨日記事にさせていただいた誰でも参加できる基本を築ける要素と共に、一方ではデザインと一口にいっても本当に様々な要素が絡み合って、ようやく人々に愛され評価されるものが出来上がるということも、デザイナーはもちろん、デザインに携わる人は心に留めておく必要もあるだろう。
そして、日本人の本来持っていたはずの魂や感性は、世界に通用するものを生み出せるということにも今一度目を向け、見失わず、自信と誇りをもってよいのではないだろうか。
デザインの世界においても。


posted by Rin at 18:54| Comment(4) | TrackBack(0) | デザイン全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rinさんは、(いい意味で)とてつもない事を書かれますね。私はRinさんのプロフィールを詳しく知らないのですが、そんな事はどうでもよく、今回書かれている記事は、非常に興味深いものです。
いつもそうですが、私は街並みや景観づくりに関わる者としてコメントします。

景観は個の折り重なりです。だから美しい景観づくりは個のレベルを上げることしかないと思っています。現在の日本の景観づくりは、全体のまとまりのあり方や基準を作り、それに合う合わないを定量化する手法が主流です。でもそれでは限界があると思います。
個(例えば一つの建築物)のレベルを上げるというと、それぞれの個性ばかりが際立って煩雑な街ができると思われがちですが、実はそうではなく、本当にレベルの高いものというのは背景にある自然や隣近所の事まで十分に配慮し、且つ人々に心地よさを提供しているものではないかと。そういう思想は、本来の日本文化だと思います。
そういう意味では、乱暴な言い方ですが、現在の建築は個が主張しすぎていると思います。

こういう事は、きちんと自分のサイトで記事にしないといけないのですけどね。ついRinさんの記事に触発されて、すみません。

実は、兵庫県立芸術文化センターと高松公園の関係性も、その辺りの思想を実践したかったんですけどね。
Posted by shotam at 2006年03月16日 20:12
話は変わりますが、このサイトの右のサイドバーに貼ってある『大阪から発信する』の画像を頂いて、私のサイトにリンクを貼らせて頂いてもいいでしょうか?
Posted by shotam at 2006年03月16日 20:19
今の会社でもどうような事おっしゃられていました。
人材が集まらない状況に陥っているということ。
今はアウトソーシングが導入されて多様化になってきているけれど、技術者増やすのだったら正社員の確保は当然のことだと私は考えます。話しは別なのですが、労働力があってこそ、子供の人口は増える事。いろんなデザイナーがいますけれど、職人者はとても貴重な存在だと私は考えます。
Posted by urban+ at 2006年03月16日 22:09
shotam様

景観について、おっしゃられていること、よく
わかります。
本当にレベルの高いものは、あらゆる配慮が
なされてる・・・、なんだか、いろんな物事に
相通じることかもしれませんね。


このように言っていただけること、恐縮ながら
うれしいです。
年齢を経て見てきた経験から思うことを書いて
いますが、ここで挙げている問題点を個々に
掘り下げるとさらに色々なことが見えてくると
思います。
そして、ある程度の経験を積まれたデザイナー
の方は、わかっていらっしゃることだろうとも
思います。書いたりしないだけ。(笑)

けれどいろいろ見ていて、伝えるために書く
こともホント大事かなと、最近特に思います。

“大阪から発信する”、まぁ!いいのですか?
そうしましたら、本当にがんばって更新しない
といけませんね。(笑)
こちらこそ、よろしくお願い申し上げます。
もし、内容がイマイチ化してきたら、いつリンク
はずしていただいてもかまわないですから。


urban+様

アウトソーシングもやり方しだいなのでしょう
が、雇用の安定は重要な社会問題ですね。
実際、子育てしようと考えるなら、安定した
状態でなければならない・・・、少子化問題にも
繋がる問題ですね。

建築だと・・・良いお仕事してくれる大工さん
も、平均年齢が高くなっている。
人材育成、本当に各方面で重要ですね。
Posted by Rin at 2006年03月17日 07:03
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