2005年11月16日

思い出のFM802

今日はいったん、東京で観てきたことを記事に綴っていくことから離れ、少々違った趣向で、思い出話をまぜて。

FM802-2.jpg FM802-1.jpg FM802-3.jpg
この写真は今から約10年前に、大阪のラジオ局、FM802で日曜日の午前3時に撮影したものです。なぜ、こんな写真がわたしの手元にあるかと言えば、これを撮影したのはわたし本人であり、わたしはこの時、FM802のスタジオ内の壁面改装工事の現場監理をしていました。(こんなお話を出せば、本当にわたし‘Rin’というのが、どこのだれかとわかってしまわれる方ももしかしたらおられるかもしれませんが、それはどうぞ胸の内に秘めておいていただければと願います。)
現場監理などと偉そうなことをいっても、当時20代(現在30代)で、しかも建築や音響についても特別に大学などで学んだわけでもなかったわたしにとって、携わっていた建築音響という世界の仕事は、すべて周りの方々から教えられながらの綱渡り状態で、それでもその時のわたしなりに必死であったことが懐かしく思い出されるこの頃です。

この壁面改装は放送を止めないで行うために、確か4つあったスタジオを1つずつ24時間で仕上げるというもので、何日かおきのお昼からお昼までという工程で行い、工事中わたしは職人さんとともに、スタジオと局のすぐ外の廊下でグラスウールという素材を巻いた壁面パネルを造るため、行ったり来たりしながら作業させていただきました。
そんな中、平日は真夜中も常に局内は人に溢れており、当時はすべてFAXでリスナーからのリクエストを受け付けておりましたから、送られてくるFAX用紙や電話を、スタジオ内での放送へ繋げていく女性達が活き活きとしたご様子で忙しく働かれていたり、スタジオ内でDJのヒロ寺平氏がおそらく直接放送とは関係なかったかもしれませんが、‘俺が法律だ!イェーイ!’とノリにノッてスタジオ外の方々に手を振りながら一緒になって踊っていらしたりと、それは楽しい光景が繰り広げられていました。
そして…工事に携わった中で、ふと気がついたある瞬間の時間帯、その時だげが、本当に局内から一部の技術者の方を残して人が消えた時間帯で、それがこれらの写真を撮って残しておこうと思った日曜日の午前3時だったのでした。

この写真の壁面に描かれたイラストは、ご覧になられておわかりになる方も多いかもしれませんが、イラストレーターの黒田征太郎氏のもので、記憶に間違いがなければ、わたしがスタジオの改装の場に立たせていただいたこの時が、この黒田氏の作品をFM802の壁画として観る事ができた最後の時であったと思います。
その後FM802では、この黒田征太郎氏のイラストなど、黒田氏・長友啓典氏、K2のお二人のイラストやロゴなどを開局とともに起用したその流れを受け継ぎ、現在、関西で新しいアーティストの発掘と育てる場ともなっています。

わたしがこの写真を今回、ここに掲載させていただこうと思った理由には、‘デザインを残す’という行為への想いが働いてもいます。

デザインジャーナリズムという言葉を、昨今、デザイナーの方々あるいはデザイン関係者の方々の間で語られるのを見かけることが多くなり、時としてその言葉は批判や怒りの対象ともなっていることもあるように見ております。
わたしはこのブログを書き始めてより、デザインと言葉の関係も考えることが多くなりました。そしてできるならば、わたしのつたない言葉であったとしても、このような場を使ってでも、見てきたものを残し伝えられることに、何かの意味を持たせられたらとも願うこの頃でもあります。

このような一個人のブログなどをジャーナリズムの末席であれ加えるのは論外で、あまりにおこがましいことです。ですが、わたしごときのこのブログは違っても、著名な方のアクセス数も桁を超えて違うブログなどは、それそのものがジャーナリズムでもあるように思いますが、そのような場によってデザインジャーナリズムという言葉は批判をあびていたりのように感じることがあるのです。
デザインはジャーナリズムを必要としない、メディアが多すぎる、日本のデザインは腐っている、…そのような言葉も見かけました。それらの怒りが、とても悲しく聞こえてきました。果たしてそうなのでしょうか…。歴史的な建築物のようなものでないかぎり、形あるものはいつかこの世からなくなります。それを後世に広く伝えられるすべがあるとするならば、それはジャーナリズムの成せる大きな役割のように思うのは、わたしだけではないはずです。

わたしも、ささやかなものではあっても、自分自身が図面を描いたりデザインしたりで、それらが人の様々な批評を受けながら世に出ることの洗礼を受けてもきました。現在の仕事は建築音響の世界とは違った方向へ進むこととなりましたが、それでも同じように何かをつくり出す場に居続けてまいりました。
ですから、ある程度著名なデザイナーの方ならなおのこと、自身のデザインに対して思ってもみない言葉で表現されたりには、なかなか我慢のならないものがあるということは気持ちとして非常によくわかります。
ここではデザインについて情報以外で書くことがあるとしても、批判や批評めいたことを語るつもりはありません。今日ここで申し上げようとしていることも、‘批判’‘批評’ではけっしてありません。あえて言うなら、悲しく感じたことへの自分への問いかけです。
書くことへの‘資格’という言葉も見かけました。現代社会で、このようなブログをはじめ、書くために資格を必要とするものなど、ほとんどないに等しいのではないでしょうか。
求められることは、モラルという漠然としたものにすぎません。
デザインの世界はわたしなどから見れば、世の様々な分野の中では、メディアもそこで書こうとする方々の姿勢も、真摯な取り組みが多いように思うのです。まだまだ、一般的なものより、専門性の高いものが多くもあり、より一般へ向けたメディアは必要とされてもいるように思います。

実は今、年齢とともにこれから自分が成すべき道を悩む中にもあり、このブログを書き始めたというのもありました。あまりに無知で小さな自分にとっての、これは本当に勉強の場でもあり、真剣にデザインというものと向き合ってみたいという想い、そして、見てきたもの感じたものを残したい想い、それらが交じり合ってこのブログは存在しています。
少々、まじめに書いてみたいという想いも強くなりはじめているこの頃、デザインについて語られることを疎ましく感じておられる方々の言葉を目にしましたら、わたしのような無知無名なものへの言葉ではないとわかっていても、デザインについてを残していくためのメディアや言葉への意味や意義を、自分自身への言い訳のように書いてみたくなりました。

今、インターネットで検索をしてみても、黒田征太郎氏のこのFM802のデザインを観ることは、簡単にはできません。その当時を知る世代のリスナーから、新しい世代のリスナーへと、主なリスナーも移りつつもあるかもしれません。
けれど、あのころのFM802のデザインへのこだわりがあって、今の関西で活躍の場を得たアーティストがいるということも、忘れ去られたくはないと…、FM802を今も変わらず楽しみに聞いているリスナーの一人としても思うのです。

メディアで多くを取り上げても時代とともに残されるものは、わずかになっていくのであるならば、より多くの場所で、様々な意見ではあっても、より語られる方が、日本のデザインは活性化していくのではないのでしょうか。最後には淘汰されるのですから。
書くことへの資格が必要とされないのとはうらはらに、読むことへの選択の自由と読んだものから考え学ぶということを、人は知っているのですから。
posted by Rin at 12:40| Comment(4) | TrackBack(0) | デザイン全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rinさま
こんにちは。デザインと言葉、僕にとっても大きなテーマです。たとえばいま自分の机の回りを見回してもデザインされたものばかりです。パソコンにホームページ、雑誌にマグカップにホチキスにポストイット……。それぞれに思いがある。企業戦略があり、デザイナーのこだわりがあり、技術の歴史がある。そうした人の思いを拾い出すのが、自分の仕事だと思っています。

ジャーナリストやライターの仕事はそのごく一部を拾い出しているにすぎないのですが、語り部は必要です。時に辛辣な言葉もはき出す必要も出てきます。
同じようなことを考える者どうし、ガムバッテいきましょう。
Posted by cabanon at 2005年11月23日 17:08
cabanon様

貴重なコメント、ありがとうございます!

ブログを書き始めたことを通じて、デザインと言葉について、 本当に考えることが多くなりました。
cabanon様(藤崎様)のブログも、いつも大変興味深く拝読させていただいております。

デザインにこだわりある商品などについて、なぜかデザインの専門的な雑誌では詳しく取り上げられているのに、一般的なものでは、その情報の3分の1も伝えられていないといったことを、近頃見かけたりがありました。その商品を使う人々は、なにもデザイナーなどばかりではなく、デザイン云々の知識より、なんとなくその形が好きと感じる人であったり、手にした感じがよかったと感じて使う、デザインへの専門家ではない方々が圧倒的に多かったりするはずであるのに・・・。
デザイナーの想いを伝えるべき、知ってもらうべきは、そんなちょっとしたきっかけで使ってみて良かったと感じてくれた人であったりするのでは・・・と考えてしまいました。
まだまだ本当の意味で、デザインを伝えるメディアは少ないくらいなのだと思います。

>同じようなことを考える者どうし、ガムバッテいきましょう。

お言葉、大変恐縮で・・・、また光栄の極みです。ありがとうございます!
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

Posted by Rin at 2005年11月23日 23:50
コメント遅くなってしまいましたが、
Rinさんこんばんわ!

素敵なお仕事されているんですね!
デザインに関わっている立場として、
なんかすごい力強いお話を聞けたように感じました。
自分の思いをつらぬき通すのが時によってしんどいなって思うこともありますが、
以前何かで聞いた言葉。「人はやってしまったことの後悔より、やらなかったほうが後悔する」
そんなことをちょっと思い出しました。

(鳥柄の写真つながりで)
sky&BirdのアイコンRinさんのサイトも貼られたんですね!笑。うちのサイトと仲間ですね!
Posted by Shiho@ash-argent at 2005年11月24日 23:18
Shiho様

こんばんは!

そんな風に言っていただくのはお恥ずかしいかぎりで、試行錯誤の連続なんですよ(^^;
でも、‘やらないほうが後悔する’っていうのは、ほんとそうだな・・・と思います。
人生、一度きりですものね。

>sky&BirdのアイコンRinさんのサイトも貼られたんですね!

そうなんですよ〜。 Shihoさんのところと『同盟』です(*^^*)
Posted by Rin at 2005年11月26日 00:09
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