
久しぶりの更新。
「花卯」という、うどんの定食などを食べさせくれるお店がある。このブログで、初めて取り上げさせていただく和食店である。
うどんすきの「美々卯」といえば、全国でご存知の方も多いのではないだろうか。この大阪に本店をもつ老舗の、「花卯」はひとりでも気軽に入れるような新しいスタイルで始められたうどん屋だ。
大阪は淀屋橋の御堂筋を挟んで西側のエリア、ちょうど大阪ガスのある裏通り沿いにある。「美々卯 道修町店」と、角を挟んで隣あわせた場所になっている。
この「花卯」のある淀屋橋の西エリアは、かつてはオフィスを中心とした、夜になると人通りも本当にまばらな、オフィスワーカーが働いて帰るだけの地域であった。そこに「花卯」が誕生したことの背景には、『淀屋橋WEST』という街づくり計画が存在する。
実は一昨日、『淀屋橋WEST』の計画をはじめ、大阪・梅田の『イーマ』や東京・丸の内の『TOKIA』などのプロデュースをなさった潟Pイオスの澤田充社長の講演会があり、そのお話をお聞きしてきたのだった。
街づくりを“プロデュース”する。これは、今後さらに必要な分野のように思う。ひとつひとつの店舗や商業施設を個々にデザインから入って捉えていくことだけでは、日本の街づくりの問題点が解決できないことを個人的には感じるようになってきた。だが、現状の企業における施設づくりは、デザインやカタチが先行してしまっていることも多いように感じる。
澤田氏は住環境・商業施設・地域(地方)活性といったこと全般においてプロデュースなさっておられるが、それぞれが別々の分野として捉えるのではなく、街に自主的に人が集るしくみを考え出すこと、その街に愛着を持って“暮らす”ことができるようにしていくことを目的として、その土地々の生活者の視点に立った街づくりの方法を編み出していかれているということだった。
ここでおっしゃられていた“暮らす”とは、それぞれの居場所となる街において、お店でおおいに楽しむというように活用し、使いこなしていくということ。人が幸せを感じるようなことにも、繋がることなのかもしれない。
そしてデザインは、その方法に則り現実化させる上で、よりよい環境を創り出すことのためにあるのだと思う。それは店づくりや施設づくりなど以外でも、同じようなことが言えるかもしれない。
本末転倒にならないためにも、そういった基盤となるコンセプトを創り出すことの大切さを、また改めて考える機会ともなった。
『淀屋橋WEST』は、夜になると暗がりに沈むこのオフィス街に、少しづつあかりを灯してくれるお店を誘致しスタートさせた試み。終わらない街づくりだそうだ。街づくりにおける完成というものは、確かに、人の歴史が続くかぎりないことだ。過去から現代、そして未来へと受け継がれていくのが、人が暮らし住まう街。その歴史の過程において、今、街が必要としている事柄を探り出し、そこに集う人と人を結びながら新たな息吹を吹き込んでいく。そんなあり方が、老舗の新しいスタイルのお店も創りだす。
カタチ先行で踊らされるような仕掛けなどではなく、むしろ、人が求めていることを追求していく中に答えがあるような、そんなありそうでなくなっている自然体ながら柔軟な発想こそが、今こそ本当に必要とされていることのように感じた。
「花卯」のうどん。関西風のだしが、実においしい。(わたしは、うどんはやはり関西風が好きである。)老舗の味を1000円足らずで、とても気軽に十分に楽しむことができる。
灯りのこぼれ方がやさしげに感じられる外装と、店内のいたってシンプルな明るい木質調のデザイン。重すぎず軽すぎずに落ち着いた雰囲気の中、うどんのだしの香りに包まれ味わうひとときが、疲れを癒してくれる。
この『淀屋橋WEST』と、もう一軒『イーマ』にも出店している。ここにも人の繋がりから始まっていることを感じる。温かなうどんの湯気とともに、人と人を結ぶ温かさをも感じられる。
花卯 道修町店
【住所】大阪府大阪市中央区道修町4-4-4
【TEL】06-6231-0665(美々卯 道修町店)
【営業時間】
月〜金 AM11:00〜PM21:00
土 AM11:00〜PM14:00 日曜・祝日休み
【関連HP】http://www.mimiu.co.jp/mimiu/top.html


(上写真は、昼間の花卯と美々卯本店。)